画集刊行への道②
画集といえば、デザインを凝りすぎてしまうと不必要に豪華な仕様となってしまい、一度本棚にしまうと次に開く機会が無くなるほど、重くて分厚いものが多い。
本好きな私は、やはりボロボロになるまで読んでもらえるような画集にしたかったので、絵を見て楽しむ視覚的要素だけではなく、読んでも楽しめる画集を作りたいと思いました。
そうなると、ほとんどの画集は他者との対談を載せても1コーナーですが、私の画集は座談会と対談の2コーナーを設けました。
<座談会>
座談会メンバーは彫刻家の大森暁生氏、女流日本画家の大竹彩奈氏、日本画商の夏目洋史氏、と私の4名。
大森暁生氏はジャンルは違えど私が最も目標とする芸術家であり、アパレルブランドやミュージシャンとのコラボレーションを続けるこの世界のトップランナー。
大竹彩奈氏は大学の後輩でもあり、友人でもあり、職場では同僚でもあった、今や美人画ブームの立役者といえる人気作家。
夏目洋史氏は私が初めて作品を買って頂いた画商であり、日本美術の未来を支える立場である老舗日本画商、靖雅堂夏目美術店の四代目。
3人に共通していることは、私のことをよく知りながらも仕事内容が全く異なるということ。
ジャンルの違いから幅広い内容に話が広がり、ノーカットで編集できないのが残念なほど、座談会の内容はとても濃いものになりました。
<対談>
対談の相手は陸上選手の鈴木亜由子氏。東京オリンピックマラソン代表という名実ともにトップランナーながら対談の相手を快く引き受けてくれました。
私が鈴木氏の大ファンである為希望して実現した対談であり、世間の知名度では雲泥の差がある鈴木氏。しかし、この本の主役は私ということでホスト役に徹し、話を組み立ててくれました。
「秀才ランナー」と呼ばれる所以か、鈴木氏は驚くほど好奇心旺盛で、馴染みのない日本画について多くの質問を投げかけてくれるなど、 その姿勢に何と感謝すればよいのか。
その目には適当に答えても許してくれなそうなオーラがあり、画材の説明から、芸術とスポーツの共通点を探っていく流れの中、私も真剣に言葉を選び、最終的にはライバルや仲間、後輩たちとの関係まで語り合うことができました。
以上の座談会と対談が、この画集を読み物として面白くさせています。コロナ禍において実現には苦労もありましたが、どちらもじっくり読んで頂ければ幸いです。