生命あるものを描くとき

私が作家として歩み始めた頃から、ライフワークとして数々の動物や両生類、海の生物などを描いて来ました。

その理由を問われることも多く、それぞれの表情や質感に興味を抱き制作意欲が湧いてくる、などと答えることが多かったのですが、それは一つのきっかけに過ぎません。

振り返ると、人間社会にも存在する様々な心、すなわち気持ち、想い等の感情的なものをそれぞれの佇まいや目線、群れる姿などを通じて表現したかったのだと思います。

制作するうえで注意している点は、動物で言えばやさしい感情を表現すればするほど陥りやすい、可愛いさや癒しのみに片寄った絵にならないようにすること。世間的に馴染みのない生き物を描くときは、奇をてらっただけの絵にならぬよう、その都度伝えたいことが画面に滲み出てくるまで筆を置かないことです。

結局は自分との戦いになりますが、粘り強く筆を進めることが作品の説得力となっていきます。

BACK